数える
夜を
その存在を
その版図を
人生の裏側から君は数える
吊るされたものが笑う夜
浮き上がるものが泣く夜
どんな夜が
君に魂の改変をせまっていたのか
わからない
わからないか ....
地をふりかえる
もはや人でないものとして
山に分け入るべき時だ
鼻を濡らして
舌を濡らして
人としての重荷を下ろす
頬を赤らめ
森を通って山の頂上にたどりつく
おしり むずむずする
 ....
夜は死ぬ
その中に秘密を宿らせたまま
ふたたび夜が生まれ変るまでの
小さなひととき
人は夜がその死に際して降らせた
ばらばらの
暗い破片を
胸に突きさしたまま歩く
何かおかしい
どう ....
 空を見上げるのが好きだ。全天が雲で覆われている時以外は、外に出ると必ずといっていいほど、空を見上げる。普通の人はあまり空を見上げない。時にはうつむいて歩いていることもある。空を見上げるのが好きな俺は .... 眼を閉じよ
どんな風景が
どんな制裁が
君をここまで連れてきたのかを想像せよ
踏みつぶされた
ひとつひとつの物語を噛みしめて
陽の下でのあらゆる可能に背を向けて
夜の中での不可能に随伴す ....
確かに
すべての物語は 語られた
それは真実
疑うことの出来ない 真実
だが
人々の ひとりひとりの
それぞれの物語はいまも
日に
夜に
生まれつつある
やがて
歩くものとなる物 ....
越えてゆく
満月の下
そのものたちは集団で歩く
関節くさい入江を跨いで
人々の眠りをおびやかし
岩石のにおう橋を渡って
人々の夢にゆさぶりをかける
君は眠れない
君は寝床の中で汗を流し ....
あまりにも長い一日だったな
そう あまりにも長い
頭の中で 声と声が話し合う
俺は二重人格なのだ
ひとりの俺は勇猛果敢で
もうひとりの俺はあまりにもなさけない
あまりにも長い午後だな
そ ....
彼は
街角の信号機に吊るされている
頸に
太い縄を巻きつけられて
どんな罪なのか
どんな過ちなのか
それを知る者は誰もなく
彼は吊られながらも 笑っている
それはひとつの風景
この世 ....
世界は正常で
人間は生まれた時から既に正しいと
信じる脳天気な操り人形たち
彼等のはきはきした口調
輝く瞳を尻目に
いま空高く
首が飛ぶ
もう数世紀も前に胴体から切り離されて
わが骸を ....
{引用=あるいは晩夏の目醒め}

夢は終った。その疲労を脚韻ににじませて、僕は森の中を歩いている。森は僕の森。基本的な掟に支配された原始の森。森の秩序のすべてをとりしきる僕のため、鳥たちは譜面通り ....
ふらふらと
さまようのか
群集よ
醒めている目を閉じて
開いている口を噤んで
ふらふらと
朝から 夕へ
夕から 夜へと
たださまようのか
群集よ

君たちはまぼろし
まぼろしの ....
そして佳境に入った祝宴は
いつ果てるともなくつづく
せめて笑え
君は死んだ
君の生は
もう明るい陽を無条件に享受することはない
倒立した塔を褒めたたえ
これら魔の巣窟に敬礼せよ
そう
 ....
 詩誌「荒地」に所属していた詩人たちの中でも、北村太郎の存在は一種特異である。鮎川信夫のように出発時に先頭に立つこともなければ、田村隆一のように低空飛行しながら生き延びることもない。最初期にはいかにも .... 春の鼻先で鶯どもが歌う
淋しい発声練習
その声に誘われて わが幼年の町へ向かう
死を虐殺する季節
音も 物も
すべてに色がつき始めるが
この骨のような町はいつまでも
錆付いた単色のまま
 ....
散歩する
ひとりで
世界に抗うための 肝試し
夜の墓地
君の他には誰もいない場所
君は闇の静かな渓流の中に
ひとつの影を見る
誰もいないはずなのに
墓地をうろつく黒い影
君は見る
 ....
ねむる石のねむれない夜のかたくこごえた思
い出のなかのあらゆる音をききあらゆる色を
みてあらゆる味をなめてあれはとおい海のな
がい砂浜の潮とたわむれる歳月だったあれは
ふかい青空のしたのひろい ....
ビニールが
     いきなり君の顔にはりつく
突風にあおられて
(どこから吹く どこに吹く 風)
君の顔面に
呼吸を奪う透明な仮面
ふと見渡すと
群集のひとりひとりに みな
ビニール ....
はら
  はら
    落ちる
       散る
風邪をひいた 熱 まだ、散らない
生まれ、愚鈍の、花
さっきまで
     五月まで
         月までの遊覧飛行、
乱費す ....
空の中に沈め
どこからか
笛が聴こえる
それは君を呼ぶ笛だ
やがて君も
死者の隊列に加わる
その時のために
空が君に向けて吹く笛だ
山の稜線があまりにもくっきりと際立っていて
空はあ ....
ふけよふけ風よふけふらふらとふらつきなが
ら歩く背中を笑うように風よふけふきげんな
女のみにすかあとをひるがえしふせいみゃく
にくるしむ老人ののこりすくない頭髪をおび
やかしふるいぺえじをめく ....
夜は暗い
夜は寒い
いまこの荒野を
この時間にしか在ることが出来ない騎士が
ひとりゆく
彼は自らの馬を失くした
それは五百年前のこと
彼は自らの体を失くした
それは五百年前のこと
い ....
 本当は、こんな文章を書くべきではないのかもしれない。ましてやそれを発表するなどということは、絶対にしてはいけないことなのかもしれない。だが、時には書かなければいられないこともあるし、書かなければなら .... ひるがえる
水の分子
玉となって
雨となって
降りそそぐ
鳥でさえも
ひるがえる
水の玉に
水のために
ひるがえり
ゆっくりと落ちてくる

空を見る
地に視線を落とす
ひる ....
夜、
扉は開かれる
恐れることはない
我々は誰もがそこへ向かっている
まずは 手による想像を洗い浄め
火をもってすべてを鎮めよ
みだりに本当のことを口にしてはならない
それは君を不幸にす ....
流れにさからってのぼってゆく鮭の産卵のよ
うにうたうたうものは自らを束縛するすべて
のものに抗いうたうたう水の飛沫がとびちる
ようにうたのかけらはとびちりその濡れてふ
とった水を全身に浴びて鰓 ....
飛行機の夢を見た
滑空する
雲の上の翼
その下にたたずみながら
許されずに在る 自らの境涯を
針のように感じていた

そんな 夢だった
朝の空気は変らずにひんやりとしていて
世界中の ....
その人は起き上がる
いまだ眠たげな目をこすりながら
一杯の朝のコーヒーを探し求める
たった一杯で
本当に目が醒めるのなら
世界は半日ごとに覚醒と睡眠を繰り返す
整理された場所になるだろう
 ....
 数年前、引越しの際に荷物を整理していたら、和室の天袋の中から、昔父が書いた詩の原稿が出てきた。以前から、僕の父親は若い頃に詩を書いていたらしいと、聞いてはいた。だが、僕の知る父の姿からは詩を書くこと .... 不幸な者が飢えるのは
あまりにも遠くを見すぎるためだ
降りそそぐ朝の洗礼に
われわれの首筋は鈍く痙攣する
釣り上げられた魚が
苦しげに未完の呼吸へ焦るように
われわれは前夜の遂げられなかっ ....
岡部淳太郎(329)
タイトル カテゴリ Point 日付
百の夜[group]自由詩4*05/5/18 20:23
尾のあるもの自由詩11*05/5/15 23:35
夜の鍵[group]自由詩6*05/5/13 18:27
空を見上げる散文(批評 ...2*05/5/11 0:01
オカルト[group]自由詩4*05/5/9 19:58
物語[group]自由詩7*05/5/7 9:59
傷の邪教[group]自由詩0*05/5/6 20:06
あまりにも長い自由詩3*05/5/5 7:38
鋭角の風景自由詩6*05/5/2 20:52
異常気象[group]自由詩5*05/4/30 1:05
[group]自由詩1*05/4/26 23:03
群集挽歌[group]自由詩4*05/4/24 23:18
流体静物[group]自由詩2*05/4/20 20:16
北村太郎(その詩と死)散文(批評 ...12*05/4/17 8:00
骨の町自由詩4*05/4/13 18:43
鬼火の引力[group]自由詩5*05/4/10 7:33
石のための散文詩[group]自由詩4*05/4/7 23:53
悪夢とビニール・ジャングル[group]自由詩2*05/4/5 0:08
薔薇の虐殺自由詩5*05/4/3 22:16
空笛[group]自由詩4*05/4/1 23:20
風のための散文詩[group]自由詩6*05/3/30 23:30
夜の騎士[group]自由詩5*05/3/28 18:54
詩人の罪[group]散文(批評 ...40*05/3/25 23:38
水玉記念日自由詩12*05/3/22 0:11
降霊術[group]自由詩4*05/3/21 12:39
水のための散文詩[group]自由詩5*05/3/18 20:39
飛行機の夢自由詩5*05/3/15 19:31
詩人の誕生自由詩9*05/3/10 19:39
父が書いた詩散文(批評 ...6*05/3/5 12:15
終着の浜辺自由詩7*05/3/3 22:47

Home 戻る 最新へ 次へ
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 
0.37sec.