仄暗い公園のベンチで
みかんの皮を食べろと言われている老人が
喜んでと言って頬張っていたのは新聞紙
これでいいですかとにこにこしながら
鳩の目で少年たちを睨みつける
ぽおっぽっぽっぽ ぽ ....
「愛する心を失くした僕は、あなたの眠りを得ることで、愛を取り戻したのです。それを永遠にする方法もまた、眠りにつくことだったのでしょう。永遠の命より、永遠の愛を選んだのです。悲しくはありません、こんなに ....
そうやって夜は沈み
盲目のあなたは歩くこともできず
杖を探して這い回るのです
まぶたを透かす希望に
わずかなぬくもりを感じると
胸の奥に溜め込んで満ちるのを待つ
狂いそうな ....
闘争は常にあり、ときとして高みより眺めれば静かなれど、戦場はその内より崩壊の曲を奏で、その旋律は土台からくつがえされる。
とかげのしっぽ
途切れたしっぽ
さらに細かくして
きれいに並べた
つながらない先端
二番目、三番目
つながらない
動かなくなって
それは死んでもいなくて
近づいた胴 ....
淀んだ感情にくるまれて
不安げな蛍光灯が影を揺らす
遠くに
まるい光がぼんやり見えてくると
敏感な肌が泡立つように怯え始める
やってくる
近づいてくる
しがみつくものもない孤 ....
あなたを想って
一つ一つ記憶を浮かべていたら
どこからか笑い声が
鎖骨のくぼみに頬を近づけて
澄んだ胸を押さえると
その声が
自分の中の空洞で響いていることに
気づきました
そ ....
開放されない夜
こんなにも悲しみは
不快な落下を求めて
その瞬間を嘆くことさえ許さない
形を維持できない感情は
なめらかに体をすり抜ける
闇を潜めて光彩に垂れた
....
遠いめまい
かすむ声
押さえても届かない
痛み
息ができるほどの
苦しさ
穴に吹き込む風
根拠のない寒さ
血のような涙
どれもこれも
あなたを悩ます
無意識に探す
安らぎ
水 ....
建築現場の鉄骨が
空の重さに耐えている
昼下がり
子供たちがホースで虹をつくる
二階のベランダから身を乗り出す猫
視線の先には
鳥が羽を休めている
鉄骨が発する低い唸り声が
体 ....
37.2度の恒温動物は
夜行性の眼を光らせている
今日は何だか疲れてしまって憂鬱
そんなセリフは引き裂いてやった
暗闇の方へ
暗闇が呼んでいる
それはまったく習性で
インター ....
愛しい君の投げた矢が、僕のケツにHit!
悶絶する僕に
君の第一声は
「あなたをねらったわけではありません!」
(って、そのセリフが痛い)
「ごめんなさいね・・・」
( ....
右手を軽く握って手首を曲げます
そしてそのまま右耳のそばへ
もしできるなら
左足で首のつけねを掻いてみましょう
気持ちいいです
陽だまりでぐてーっとなって
幸せそうな表情を浮かべま ....
一月の風が過ぎ去った頃
空を迷って辿り着いた木の実が
夜を探していました
まだ
日暮れ前の鳥たちが並んで飛んでいる
公園の歩道には誰かが落としたハンカチが
あと少しで浮こうとしています ....
どんなにひっそり生きてみても
こんなに邪魔な僕はいない
と、思って
せめて自分のにおいを消そうと消臭スプレー
かけてみた
しゅーっと吹くと腕が消えた
なんだ僕はまるでにおいのか ....
指先でつまんで
そのあとどうするの?
まさか捨てたりしないよね
脇役は最後まで残っても
結局脇役で
だけどその場面を彩るのには必要なんだ
パセリ
緑色のアクセント
僕が ....
空に向かって
「さよなら!」って言っても
空はなくならなかった
僕もそのまま
ただ思い出だけが
涙を揺らします
「さよなら」は
いつも寂しい風でした
きれいな空があることを
忘れたくなかった
雨が降るのを
空が落ちてくると言った 僕は
落ちてくる空を見たことはない
びしょ濡れになってもいい
見上げた空がきれいであるこ ....
何もかも面倒くさくなって
風呂に入るかわりに洗濯機に入ってみた
さすがに寒いと思ったので
あたためた風呂の残り水をポンプで移動
全自動のスイッチを「お急ぎ」にして
ボディーソー ....
どこにもない慰めを
深い色にまぜてとかしてみたら
少し落ち着いたみたい
ぬくもりって
だんだんと冷めてゆくものだから
あたりまえに溜息なんてついてみる
琥珀色の鏡に
吸い ....
スノーワルツにあわせて
銀盤の上をまわる少女
胸を押さえ
そらに向かって
左手を掲げる
壊れて出ない
一番たかい音を求めて
未完のワルツを踊り続ける
かーごーめ かーごーめ
うずくまっていました、ずっと
赤い空がぐるぐる回って
頬を舐める風が怖かったから
かーごの なーかの とーりーわー
怯えた背中を公園の木に ....
猫の眼のような月が
僕を見ているようでしたが
見ていたのは実は僕でした
そこには宇宙が広がっていましたが
実は僕こそが宇宙でした
常に生まれ
常に死にます
それは調和のた ....
呼び鈴が鳴る
お届けものです、と言っている
(僕はおりません)
(僕はここにおりません)
あきらめて走り去ったあと
郵便受けの不在通知をつかんで
電話する
何時頃いらっしゃい ....
ため息を薄めた空気を吐き出せば
白くけむった現実が儚く揺れる
滅んでゆく世界が急激に収縮すると
必至にしがみつかなければ吸い込まれてしまう
その前に見えた
一瞬の閃光を書きとどめるた ....
ゆっくりと沈めてゆきます
きれいになりたくて
きれいになれる気がして
沈めてゆきます
あと少し
とても穏やかになります
静けさに包まれて
何も恐くはなくて
眠る ....
重たい言葉を呟きながら
折った鶴はくずれた格好でいました
尾なのか頭なのかわからない二本のツノは
怒っていました
指がふるえて
上手に折れないのですから仕方ありません
せめて寂しくない ....
小指を口にひっかけて
人差し指で垂れ目をつくる
ほら、こんなにおかしい
薬指で鼻を上に向け
やり場のない親指と中指
ほら、やっぱりおかしい
お前、ちっとも笑わないね
そう ....
あっちむいてほいっ!
得意げに君はいう
あっちむいてほいっ!
また僕の負けだ
いつだって
君の指さす方向が気になる
あっちむいてほいっ!
たまには僕の指先を見てよ
あっ ....
何処から来たのかも
何処へ行くのかも
言えない旅人は
それが旅だと呟いた
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