眠れずの夜半の僕はといえば
ベランダに丸椅子出して店番す
陳列された星座の数々に反し
なかなか御客も来そうにないが
夜蜘蛛は一晩経つと朝蜘蛛に
こっそり生まれ変わってた
死なずとも生まれ変われる事を
こっそり僕に教えてくれた
食器棚の上段、隅っこに
夏眠まっ只中なるマグカップ
君の目覚める季節には
また、キスでも致しませんか?
まばゆい夏制服の午後をも
陽はゆっくりと、やがては暮れ
あれほどまでに心の通じた学友とも
いつの間にか、もう間に合わず
バイエルの教本の新しいまま
ピアノを辞めてしまった日の夜か
右手、指番号の1番2番にて
恐る恐る、亀頭の皮を剥いたのは
指に指の毛が生えていること
永いあいだ、すっかり忘れていた
まだ僕に夢も希望もあったころ
いつかの祖父らと田植えをしたのに
小指の腹から一滴
澄んだサイダーを下さい
また夏を生きられる歓び
その一滴に見いだしますから
命を失える幸せ
命あるもの、みな持っている
生まれたその瞬間から
心底の利き手に持っている
決して失うことのない幸せ
たったのひとつ、確かな幸せ
今日は悲しくて ....
とろっとろに吐露したい
溢れて、流れ出しちゃいたい
もう隠しごとは嫌だ
毎夜に寸胴鍋で煮込みまして
とろみ、とろとろ、とろっとろ
とっくに出来上がってるよ
おた ....
日々に少しの余白を
どうか忘れないでいてね
なんにもしない日とか
空ばかり眺めていたりとか
そういう
一見すると無駄のような
切って捨ててしまいそうな
だ ....
昼間、干しておいた敷き布団
どこか小麦の香りかな
ひとまず、嗅ぐ
犬になる
犬になっている暇はない
はやく眠らねば
眠らねば、ならぬのに
やはり小麦の香り ....
夏の子孫になり損ねました
また置いてけぼりです
誰もが暑い坂を駆けてゆくのに
白い夏制服の誰もが
それなのに僕ときたら
汗のかき方さえ習得していません
父も祖父 ....
白鯨ゆく遥かな青天を
僕もゆけたなら
四肢の折り目を開き
やっと、やっとの夏の日を
僕もゆけたなら
平泳ぎの一掻き、一蹴り
果てしなく自由に
生まれたまま ....
願わくば、彼女の長い三つ編みに巻き込まれ、ぐいっと押し込まれ。
上手く言いくるめられ、やがては絞め殺され、終いには引き抜かれ。
僕の影は僕本体よりも薄く華奢で、か細く切ない少年のように。
薄曇りの午後には一層、彼は薄く透け、あちらへ消え入りそうに。
革張りのソファーに夏肌を吸われ、少しスケベエな気持ちになったり。
しかしそれが合成皮革だと気付くと、少しスケベエな気持ちが萎えたり。
はてさて、みぎを選ぶべきか
はたまた、ひだりを選ぶべきか
どうにも悩み疲れたのなら
みだりを、ぜひ、どうぞ
みだりが何者かと申しますと
物腰の柔らかな気のいい奴で ....
君が教えてくれた勿忘草の花言葉を忘れない
ううん、そうじゃなくって、
勿忘草の花言葉を教えてくれた君を忘れない
そよかぜは、そよそよと吹いて
そして、いつからか、よそよそしい
「そよちゃん」と呼びかけたって
振り向きもせずに、通りすぎていく
かつてのように、またお話がしたいのに
....
出血多量のごとく、桜は咲き乱れる
満開に、とてつもなく溢れ出す
一刻の猶予もない
春が苦しそうに何かを叫んでいる
しかし、人々は通り過ぎてゆく
なぜ誰も知らん顔なのか ....
変なTシャツで出掛けよう
誰にも彼にもクスクスと笑われよう
指をさされて馬鹿にされよう
とてつもなく白い目で見られよう
親の期待を裏切ってしまおう
一生の約束を破って ....
夕暮れは、いつも隣に座ってた
河川敷の土手に、いつも僕と座ってた
何を話すでもなかった
ただ何となく、二人で座ってた
夕暮れは、いつも時間になると帰ってった
泥だらけ ....
これでもかと歯石を取り尽くされ
すかすかすっからかんの帰り道です
もう何も持っていません
昨日までの悲しかった人生も
明日からの悲しいであろう人生も
もう何処にも無い ....
いつの日にか、少年は青き旅へと発つ
胸ポッケの小瓶には、父の遺骨の一欠片
彼は歩く
どこまでも自由に、時に苦悩し
知らぬ間に、うっすらと髭の生え
彼は歩く
....
僕はホルマリン漬けの少年だった
理科備品室の奥底の、埃の積もった標本瓶の
その深海に、いつまでも眠っていたよ
そのせいか、大人になった今でも寝坊助で
肌はというと、 ....
えのき茸の石づきをザクッと切り落とす
その瞬間の、何とも言えぬ罪悪感よ
それでいて、なぜだか心がスッとする
みんな、離れ離れとなり
父ともサヨナラ、母ともサヨナラか
....
特別、僕のことを大切にしたりはしない
特別、僕のことを粗末にしたりもしない
毎度、ふぅん、という相づちの
そんな友達がほしい
約束なんかしなくてもいいような
午後 ....
太陽が煮崩れてゆくよ
刻一刻と、取り返しがつかない程に
肉じゃがには男爵ではなくメークインだと
そう母は教えてくれたのに
きっと僕が買い間違えてしまったせいだ
だから ....
次の街灯までを何とか生きる
あの小さな光までを生き繋ぐ
何億光年先の?後の?心底の?天上の?
分からないけど、今はただ歩く
一夜一夜を、一歩一歩と
ふくらはぎのヒラメ ....
ねぇ、帰らないでよ
君の自転車の反射板の光、
今すごく良い感じなんだよ
青と黄色が溶け合ってて美しいんだよ
だから帰らないでよ
僕とここにいてよ
こんな、しがない夕方だけれども、
コ ....
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