秋深し金木犀のご近所に銀杏植えたの誰や出てこい
{引用=#においが混ざり合って大惨事に。}
エプロンドレスのお嬢さん、
ミシン鳴らして日は暮れる。
ヴィオロン奏でるお姉さん、
ワイン揺らして逢いに来る。
色とりどりの糸くずが、
エプロンドレスを飾ってる。
布と針とで遊んでいる ....
月が傾く音がして、
ぼくはぽっかり目をあけた。
カーテンごしに見えるのは、
ボタンみたいなお月さま。
瑠璃と茜の縫い糸で、
びろうど夜空にとじてある。
きっとお仕事したひとは、
てさ ....
{ルビ産着=うぶぎ}を脱いだその日から あたいの{ルビ親友=とも}は{ルビ般若湯=はんにゃとう}
{ルビ渡=わた}る世間が鬼の国でも 一緒に歩みゃ怖かないわ
{ルビ馬鹿=ばか}になるほど浮世は楽し ....
(ああ、秋の空は露草を集めて染めるのですよ)
(あれこそまことの青ですわねえ)
天からつゆくさが降る、
つゆくさ、つゆくさ、
地が青に染まる、
つゆくさ、つゆくさ、
どこかで鈴がちりり ....
きすの痕すら残せぬ恋路 {ルビ口紅=べに}をぬぐえば夏が逝く
冷やを{ルビ呑=や}りつつとらんぷ繰ればハアトの騎兵が眼をそらす
粋な噂も七十五日 未練な小指に赤い糸
わたし 娘だった頃 夜歩くのが好きだった
公園の木に挨拶し
のみならずこっそり名をつけて
木の肌に手を押し当てては
そっと名前を呼びかけた
誰もいない真夜中ならば
抱きしめたりもした ....
氷が溶けて鳴る
その音に瞼をひらいた
汗をかいたグラスにジンのなごり
君の香りを撹拌する空調
目覚めぬそのまぶたを震わす夢に
嫉妬しながら氷をつかむ
さあ グラスにもう一杯の媚薬
蜥蜴み ....
君はジタンを{ルビ喫=の}んでいる
象牙色した指が佳い
くちびると髭の剃り跡で
わたしの視線をからめとる
君はわたしに火を点けて
ハイにしながら 微笑する
君はもひとつ紙巻き咥え
灰 ....
舌に絡まる火酒のような色恋沙汰には もう飽いた
冷えたその肩 ぬくい翼で癒やしたい そう思うのさ
舌に絡まる恨み言なら くちうつされてもかまわない
笑い飛ばして耀く君を わたしの翼で孵すのさ
眼ヂカラが強すぎる わたしは魚
君をみつめている
魚だからまぶたは無い
目を閉じることはかなわない
誰よりも雄弁な眼を持つ宿世がつらい
泣きたくて壊れそうだけど泣けない
そ ....
ワイングラスのうつろのなかで
ひらひら泳ぐは真っ赤な金魚
君がぱららとこぼす言葉を
一生懸命ぱくぱくひろう
うすい硝子をへだてた君は
赤い私しか知らないでしょう
ほんとうは君の腕のなかでな ....
{ルビ更紗=サラサ}の手触り 色彩の氾濫 溺れるこの夢の確かさ
{ルビ伽羅=キャラ}の薫り 裸身に流れるたっぷりと重い黒髪
{ルビ豊=ユタ}かさの まことの意味を知り候え
{ルビ婆娑羅=バサラ} ....
陽炎をゆびにからめて帰りませ 朝月浮かぶ狭霧の径を
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