戸口にて
人の声、聴く
この夜半
神は生誕し
闇を包み
私はそっと
鍵外す
遠く忘れた抱擁に
我が身を委ねる
そのために
光、
光溢れて
空の青、
降って来る
この吉日に
遠い目をして
手をふる君、
いつのまにか
いなくなり
光の青だけ
揺れている
新年 開けて、街 静か
枯れ葉サクサク踏む森も
川沿い遊歩道歩く人も
透明レンズの瓶底を
斜光に照らされ輝いて
無音無音、また無音
青く濃くなる天空を
見上げ私はベンチに座り
ゆったり ....
晦日の夜に
透空遥か、星瞬き
シリウス、ベテルギウス、プロキオン
冬の第三角を壮大に結び
除夜の鐘待つ街を照らす
燦々と光ふるふる新年に向け
透空遥か、星々の輝く
光溢れるこの午後を
旅人は行く、
白波飛沫浴び
見知らぬ漁村の
裏庭を
冬薔薇の香に包まれて
旅人は行く、
光のなかへ
ふっと森の脇道に
消える女の
コートの裾が引き摺られ
土煙上がり
瞬間の
狂騒に黒い幹がそそり立つ
森はやがて雨に濡れ
ひっそり静まり返っている
変わらず
愛娘と手を繋いで歩いた
川沿いの遊歩道はあり
(愛娘だけ不在となり)
果てなく伸び行く
この年の瀬、
変わらず
私は独り生きて 居て
白い部屋で
晦日を迎える
変わらず
....
樹間から
覗く冬晴れの青、
ふるふる震え
落ち葉舞い散るこの夕べ、
時はすっかり透き通り
遠い記憶を辿りいく
)何があったか
)細かいことは忘れちまったが
)ただ喜びと懐かしさだけ ....
青、
樹間に揺れ
白い巨鳥、
羽ばたいて
僕は行く
天に呑まれ
光の矢、光の矢!
蒼穹は割れ
漆黒の宇宙が唸っている
夜の入口にて
誰かと誰かが話している
太陽が無限に没した後
地球という宝石箱はぶちまけられ
夜の入口にて
誰かと誰かが話している
蠢く闇に包まれて
密やかに、密やかに
....
パチンパチンと音がする
シュンシュン シュンシュン、音 響く
半端な冬の夜半過ぎ
黒ずみ弾ける二股鞘と
剥き出される真っ赤な種子
街灯に照らされアトランダムに
蒼い地面に撒き散らされ
....
荒波白波 眼底痛
堪え堪えて書いて書く
笑っておくれよ、地蔵虫
少しの集中で火を噴く目ん玉
だから書けるうちに刻み込む
生きているから痛いのさ?
そんな生半可な答えでは納得せぬ
....
木々は枯れて葉は落ちて
遠く鳥の群れが過るとき
裸木の梢に半月が
白銀の色を散らしながら
真冬の空を愛撫して
ぽっかりうっとり浮かんでいる
)あゝやっぱり今日もまた
)永劫宇宙の営み ....
叩きつけ合う鋼鉄
反響スル
この森に
霊魂をぶら下げ
午後五時に入る
異界ノ息、
異様ナ相、、
移行ノ刻、、、
穿たれる
窪みに
今や鉛と化した
前頭葉をズブリ
....
咲き誇る冬の薔薇
清澄な空気に
白く濡れたふくらはぎ
閉じられる傘
雨上がりの明るみに
触れ合う額と額
優しい石鹸の匂い
紅に染まる薄い頬
....
愛娘が毎朝八時に起こしに来る
歪み捩れた時空の層を超えるのは
なかなか大変だそうだ
)合鍵を作ってやろうか?ちゃんと電車に乗って来いよ
おはようのキスをしながら僕は言う
)そんな ....
灰の空、
カラスがカアカア鳴いてます
枯れ葉は落ちずに
枝に揺れ
終いの色を響かせて
遠く懐かし高曇り、
鉛の身体を引き摺って
今日も今日とて参ります
....
雲、流れ
流れ、雲が空をいく
ぽっかぽっかり青を裂き
気流の鳴る音、響かせて
澄み切る初冬の夕暮れに
荒れる呼吸を収めては
私の宇宙を横切って
流れ、雲が空をいく
....
二足歩行の人間だけが
垂直に天を仰ぎ見る
天の先を凝視して
天の先を認識して
天の先を創造して
歩いては立ち止まり
立ち止まっては歩き
中村くんとは小学二年のクラス替えのときに出会った
中村くんは絵の天才だった
井の頭公園で学年写生大会があった時に描いた彼の孔雀の絵
僕はそれを観せてもらって圧倒された
画用紙から今にも跳び出し ....
ヨラさんは小児麻痺だった
ヨラさんはよく笑った
ヨラさんはそのたび涎を机に垂らした
ヨラさんは頭が良くてクラスでいつも1番だった
僕はヨラさんを笑わせるのが好きだった
僕はヨラさんの涎を ....
遠くの森のザワメキが
木霊するよな透空に
白雲一つ漂って
微睡みの午後に呑まれいく
遠い遠い感覚が
辺りを静かに支配して
わたしはぼんやり日溜まりで
胡座をかいて座っている
....
どてらカボチャが降って来る
滝のように降って来る
頭をぶるんぶるん振り回しても
俺の脳は考えない、感じない
どてらカボチャはオンオン鳴く
夜陰を軋ませ鳴き続ける
俺は独り、立ち尽くす
....
雲のどよめき艶めき、うふふ
夕暮れ間近に囁くもの
出口は入口と延々と
展がる地平に眩む我
水の色開け灰色散らし
流れる流れる、宇宙の果てまで
北風が吹いている
冷ややかな晴天に包まれて
真冬の気配が漂っている
僕は相変わらず臥せっていて
君の姿は遠くある
遠く響く君の声
僕は抱きしめ此処に居る
)君、ぼくたちはどこから ....
仰ぐ
高曇りの冬空を
透き通っていきながら
仰ぐ
人差し指を立て
天から降り立つ冷気をかき混ぜ
)わたしの肉身から
)欲望溢れ零れ落ち
)ふるふる震えて
)大地に帰る
仰ぐ ....
無私の愛が
人の魂の病を癒し
肉の病すら和らげる
冷える夜陰の静謐に
天使たちは降りて来るのだろうか
自愛に充ち病んで倒れる己の許に
あの遠い日の海の夜明け
靄と波の戯れに 無音 ....
む おん
移動していくモノの影
独り在る茫漠の床で
眠りの底から掻き分け掻き分け
異界の異様な感触を
意識の触手、体に刻む
ム オン
夜陰にひっそり回帰し
....
四国の方へ行って来ると
昔の君は言いました
僕は不安で尋ねました
いつまで行って来るのと尋ねました
すると君は言いました
ずっと行って来ると言いました
僕は淋しくなりました
....
口笛の奏で、目覚めてこの夜
澄んで響く何処から
明るい旋律音色のループ
微妙に低く高く震え魅惑の相
聴き入るうちに潮騒磯の香
漂いザワメキ布団が波打つ
扉開いて弓形の白浜
広 ....
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