夕闇迫る川沿いの道、
君と並んで歩いた道、
一人は一人を置き去りにして
一人は一人で立ち去って
今頃裏庭に降り積もる
雪を静かに眺めている
)孤独なのはわかっていたさ
)どんなに身を ....
西の空が
赤銅色に燃え残り
薄暮が辺りを包む頃
俺は拳を握りしめ
一心不乱に進んでいく
胸の辺りに蟠る
抑えがたい不安感に
鼓動激しく息を継ぎ
夕闇の道を進んでいく
西の空が
....
私が喫茶店の一隅に座ると
非人称の意識が渦を巻き始めた
)眼前のアイスコーヒーはシャリシャリ音を立てて波打ち
)ガラス張りの向こうは久々の晴天で
)遠くで笑う老人の顔はとても幸せそうだ
....
今日の平板を飼い慣らし
明日への傾斜を生きる私は
もう何十年もの間、
口を開いたことがない
者であるかのようだ
)赤く燃える明けの空
)ゴオゴオと鳴る遠い街並み
いったい出口は常 ....
ぱらぱら毛布にくるまって
はらはら伝わる母の熱
雪降る街は寝静まり
時を白く染め上げて
束の間君を母とする
ぱらぱら毛布にくるまって
はらはら伝わる君の熱
雪降る街は寝静まり
時を ....
森の向こうに空があり
私の思考が漂っている
地水火風はその中で
好き勝手に踊っている
私の感情の底に哀しみ溜まり
虚脱の寒気はいや増すばかり
自壊か決壊か知らないが
私の思考 ....
あ オチタ
あ オレタ
あ コロガッタ
あ キエタ
もう 何も無い
ただ 結果だけが
自由な行為の結果だけが
ひろくひらき広がっている
高曇りの薄白い空の許
モノクロームの大 ....
風の流れと共に
半球を描いて
白雲が流れていく
哀しい目の名無し人は
気付けば人波に逆らって
白雲の後を追う
ああ風が吹く と
風を浴びる名無し人は
気流の鳴る音を聴きなが ....
また夜になり
静けさ、
部屋に充満して
私は一人横たわる
人差し指より先に薬指が
ディスプレイに触れ
誤字が打たれていくのを
眺めながら
)アトランダムな文字列から
)生傷の如く ....
五本の石柱がたっていた
ねっとりしたモスグリーンの海水に浸され
洪水の街を泳ぐ人達
徘徊していた裸の老女は何処へ行ったのだろう?
目覚めて闇が迫って来る
自分という感覚が死んでいく
....
眼が在り映り凝視し続ける眼に
脳裏の戦場の消えない殺し合いか
眼前の草むらの子供らの激しい絡み合いか
展開され焼き付けられるその光景
草むらの草いきれも
左足にぐるぐる巻かれた包帯の ....
蒼い夜底の真ん中
白壁の沈黙、ふと途絶え
薄い格子戸開ける女の白手
手招き三度、ゆらゆら揺れる
傷だらけの幼子の抱擁
骨組み晒し、癒されぬまま
格子戸の向こうに開ける界
二体 ....
暗闇に蒼白い河原の
小石夥しく静まり返り
流れ動き澄む川は無音
黒く光る水面の異様
恐るべき氾濫を孕み
奥まった沈黙を保つ
決して終わらない不安は
この沈黙という深い謎に
剥き出し ....
底冷えする
夜に横たわり
祈っている
迫る闇が咆哮し
幾つもの夢が朽ちるとき、
心の奥処の祭壇に
火を絶やすことなく
灯して、灯して
)不眠の夜を透過する
)純白の雪を待ちながら ....
また夜になり
今日という日をカウントする
)お隣さんは明日で四十一、だという
)いただきます、いただきます
)白壁越しにやり取りして
カウントする先から
磨り減っていく肉身に
明 ....
かなしみの
青が降る
透明、
ただ透明に
なっていく
己の体
幾億もの幾兆もの者達が通った道
途、未知、溢れ
枯れ果て、移行する
闇の光の奥の
ふるふる震え揺れ
時の ....
無風に花瓶、
押し倒れ
転がる転がる
少女の手許
受け止める幼手
花瓶は砕け
甲高い笑い声
さも当然に
さも当然に、
笑い声響くたび
花瓶は粉々に
亀裂走っていく
円卓 ....
肉身の疼く
今宵の静けさに
心は乱れ不安に駆られ
詩と死と戯れる余裕すらなく
焼酎を二杯、三杯と
焼け付く視界に
蜘蛛の巣張り
払いのけても払いのけても
辺り一面の糸は ....
お別れ
回遊する魚達、
渦を巻いて
泳ぐ泳ぐ
舞い狂う雪の中
純白の視界を切り裂き
蒼く蒼く透き通り
出会い
寄り添う
肉身の二つ、
交わり激しく
夜を埋め
....
坂道に
水の流れ、
大量に
夜の透明、
車は行き交い
飛び込んでいく
人、人、人
君はスマホの
中に居て
綺麗な声で
歌っている
聴いたことのない
異国の歌を
夢見心地 ....
涙、溢れて
記憶は麻痺し
思い出せない、
いったい何があったのか
)幼いままの愛娘、
)夢で踊り飛び跳ねて
眠薬片手に
横たう今宵、
涙、溢れて
記憶は死に絶え
....
ナニカガ ウマレ ソウダ
言葉
宇を身籠もり
身籠もる言葉は
響く声また声の渦
何かが何かが ウマレテイル
夏の炎天下の縁側で
西瓜を食べている
兄と弟、汗流し
その頃青大将 ....
詩は動いている
迎える向こうの死を前にして
絶えず絶えず動いている
暮れては明ける、
遠い山並みのシルエットのように
雨が降る水曜日の朝、
刻まれた皺につうぅと雨滴が走り
男はしゃがれた声で
さようならと 言った
詩を書かない夜も
詩を紡いでいる、
私の心の底。
やわらかな
白雲の群れ、
流れ流れ
踊る影は
光の万華鏡
私は静かに傾いて
遠くの街のざわめきを聴く
裏切りが
怒りが
失望が
ふっと静まる
この白い部屋で、
思いは萎えて郷愁が
弱った心に押し寄せる
遠い山のシルエット、
駆ける友の背を包み
それぞれの場所で
背負わされた ....
均衡は崩れている
もうとっくに
)大地の空の裂け目から
)鮮血に染まった手を伸ばす人、人、人
)同情でも訓戒でもなく
)ただ助けを求めて
〇
独り冷え切った身体を震わせ
....
これらの日々が過ぎていく
畏れと驚きと怠惰を呑み込み
*
幸福は捨てた、世間体は捨てた、
ただただ至福を待ち望み
神々の生誕、闇の抱擁
爆発宇宙の渦を巻き
*
....
現の日常の表層が
呆気なく転覆される
その瞬間、
異界の地に
熱風吹き荒れ
在るものすべて
銀の粒子となり
交わり躍り離反する
)広がる広がる光の海!
)降って来る降って来る死者 ....
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