「ありがとう」と言わせない/ベンジャミン
 

塾の講師になって二年

はじめから
教えられることなど
何一つなかったのかもしれない

今日も一人の生徒が
僕のもとを去ってゆく
「高校へ行ったら、此処へは戻ってくるなよ」と
力いっぱい手を握りしめた

「ありがとう」と言われることが
僕にはとても似合わないので
最後の授業が終わるとすぐに
僕は集団から離れて
その生徒が帰るのを待つ

これから先
何処かで出会ったとしても
彼はただ自分の人生を歩んでいるにすぎない

何も教えてやれない僕には
ただ彼の成長を祈ることしかできなくて
そうやって彼は自分の力で
何か
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