道/岡部淳太郎
夜、
その背後で扉が閉ざされる
いまこそ人は
謎に踏みこむ
謎は 古の道として人の前に開ける
道はいくつもの曲り角を持っていて
靴先がそれらにさしかかる度に
人の眼は 閉じたり 開いたりする
人の背後でこわばる夜の囁き
人が背後に残した夜露の重量
だが人は振り向かない
もう 当然の生に対して何の当惑もない
まだ覚束ない足取りながら
路傍の塵に見守られて
人の時間を梱包する
甘い夢と 臭い枕
その先にある時の行末を 人は目指す
人は自らを 夜の
ただの静物として認めて
長い蛇の その腹を踏みつぶして
叫びたい思いの方へと向かう
人はすべて着やせする
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