水の中の目醒め/岡部淳太郎
 
長い眠り
    そして夢
彼は水の底で 海の底で
静かに
雌伏の時を過ごしていた
そして眠り
またも眠り
心地良い水のゆらぎの中で
彼は際限なく眠りつづけていた
動乱の前の
不気味な静寂
丸くなって 海の底にうずくまる彼の前を
魚は泳ぎ
そしてまた泳ぎ
その鰓呼吸の甘美な律動の中で
平和と 予想され得る争乱を生きていた
海の水は青いのか
黒いのか
海のしがない生物たちにわかるはずもなく
蛸は海綿のように語り
烏賊は電流のように啜り泣き
彼は 休息しながらもそのうちに
塩の思弁を育てていた
長い眠り
    そして夢
        夢の名前 それ
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