鬼火の引力/岡部淳太郎
 
散歩する
ひとりで
世界に抗うための 肝試し
夜の墓地
君の他には誰もいない場所
君は闇の静かな渓流の中に
ひとつの影を見る
誰もいないはずなのに
墓地をうろつく黒い影
君は見る
影は
墓の中へと 入ってゆく
君は慄える
恐怖は人を目醒めさせるために
常にそこにある
君はなおも歩く
墓地の中を そろりと進む
あれは鬼火
あれは妖しく輝く光
君はすべるように
その後をついてゆく

散歩する
ひとりで
この世から離れて
異常な個人となって墓地の中をゆく
あれは鬼火
あれは確かに輝く誰かの魂
君は唖のように口を開けて
すべるようにその後を追う

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