悪夢とビニール・ジャングル/岡部淳太郎
ビニールが
いきなり君の顔にはりつく
突風にあおられて
(どこから吹く どこに吹く 風)
君の顔面に
呼吸を奪う透明な仮面
ふと見渡すと
群集のひとりひとりに みな
ビニールの仮面がはりついている
肌に癒着して
取れない
歩く
あるいは歩かない
透明な
仮面の行列
その夜 君の眠りの中に
魔物が現われる
ベッドに横たわった君の身体の上に
何かが重くのしかかり
ケルベロスやらセイレンやらヒュドラやら
それはもう明らかな悪夢
仮面の人々はみな
うなされて
縛りつけられ
[次のページ]
前 次 グループ"夜、幽霊がすべっていった……"
編 削 Point(2)