太陰暦の日々/岡部淳太郎
 
区分けされた箱。そのいちばん小さ
な隅に君はうずくまって、すべての物音をは
るか遠くの出来事として聴いている。

            君が眠るそのかた
わらには、読まれることのなかった日々が、
山積みになっている。

            街はすでに春だと
いうのに、君はまだ雪の中にいて、君が休日
に執り行う祭礼をともに祝う者はなく、君は
空気の囁きを拾い集めてしまう。時はなめさ
れた獣皮。耐水性の肌で防御してみても、外
と内から火で炙られるだけだ。

            君の暦はずれてい
る。ずれていることが、君が君であることを
妨げる。

   
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   グループ"散文詩"
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