優しい機械/岡部淳太郎
まっすぐな姿勢で、書きなさい。
こんな忠告とともに、身体の歪みを矯正して
くれる機械があったら、私はそれに従うだろ
うか。椅子の背もたれの部分に備えつけられ
たセンサーが、座っている者を背後から素早
くスキャンし、伸ばされたアームが背中と首
を掴んで、まっすぐの、正しい姿勢に直して
しまう。それはほとんど拘束のようなものだ
が、機械の意思には人に対する優しさが潜ん
でいて、ひたすら機械が信じた正しさの方へ
と、人を導いてゆくのだ。
誰もが、そんな機械には従いたくないと思う
だろうが、人の心は、ある面から見れば機械
のようでもあるので、なし崩しの快楽のよう
に、機
[次のページ]
前 次 グループ"散文詩"
編 削 Point(10)