細胞(たち)の夜明け/岡部淳太郎
あ、あ、あ、剥がれ落ちる、私の細胞(たち)。
表面から落ちて、汚物(のようなもの)とし
て扱われて、泥の只中に乾いた破片として落
ちる。夏は天動説。私をめぐるうつし世がぐ
るぐると回る。醤油じみた液体の中に浮かぶ、
紅白の眼にも鮮やかな虫食い穴。剥がれ落ち
て、生きながら、私の細胞(たち)はここを
通ってもうひとつの空へと貫通する。そして
降り注ぐ。別の空から、別の地の上へと、こ
の私でさえも知りえない、もうひとつの生死
をたどり直す。それぞれの細胞核の中にひと
つずつ微妙に違った音符が整えられていて、
それらはそれぞれに偽者(のようなもの)と
して均され、その固有の姿を
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