とどける/岡部淳太郎
とどける。せかいのどこかでいきをころしている君の
ために、ひとつのうたをとどける。君がなにものなの
か、だれにもしられていなくて、しられていないこと
は、みたことのないけむりのようなかいかんでもある
のだが、君はそんなことよりも、もっとはやく、もっ
とはやくと、ゆっくりとあせっている。まどがらすの
いやなおとも、といれをながすときのすっきりとした
たっせいかんも、君はわすれて、じぶんのかおからひ
ざまでのきょりをはかっては、むしをつぶすようにひ
とつずつたんねんにいきをころしては、それをかぞえ
あげている。あるいはほされたらじおの、よるのでん
ぱのかなたに、けんそうのせんそう
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