細胞(たち)の夜明け/岡部淳太郎
 
姿を模索している。
夏の歩行術。その速度のままで汗をかき、い
やな臭いのする物体となって、私は自らの生
死をたどってゆく。そうこうしている間にも、
あ、あ、あ、剥がれ落ちる、私の細胞(たち)。
夜の物言わぬ空の表面が剥がれ落ちて、隠さ
れていた光を顕にする。剥がれ落ちて、晴れ。
夏の陽射しはこんなにも鋭く鏡面を貫く。ひ
とつの獲物(のようなもの)として狙われて、
剥がれ落ちて、身ぐるみ剥がされて、私は光。
あ、あ、あ、剥がれ落ちた、私の細胞(たち)。
無数の破片。私のいとしい失敗の数々。ああ、
いまこそ目醒めて、それぞれの物語をかたれ。



(二〇〇六年八月)
   グループ"散文詩"
   Point(6)