夭折(三篇)/岡部淳太郎
 
夭折


まだ生きているのか
そんな声が聞こえるのは
夜の 穏やかな枕の中だ
まだ生きている
時代を通過して
場所を通り越して
まだ何とか 生きているのだが

もう生きてはいないのか
君はもうこの場所に
あらゆる場所に
あらゆるこれからの時間に
君はもう 生きてはいないのか

もう生きてはいない者の
かつての声を聞くのは
夜の 涼やかな夢の中か
あるいは記憶の
砕けた石のようなかけらの
すきまの中だけなのか
まだ何とか この手に掴むことが出来る

まだ生きているのか
自らにそうつぶやいてみる
君はもうあらゆる方法でも

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