■批評祭参加作品■夭折をあきらめて夜が明けてゆく/岡部淳太郎
 
 かつて、いまよりもずっと若い頃、僕は夭折に憧れていた。いま考えると何とも恥ずかしい話であるが、かつては若くして死ぬことに感情的に強く惹かれていたのだ。中学生の頃から詩のようなものを書き始めていた僕は、日々胸中に沸き起こる感情を題材にして猛烈な速度で書きながら、心のどこかでぼんやりと自分は遅くても三十歳ぐらいで死ぬんだろうなと思っていた。時代は八十年代に入ったばかりで、ちょうど「ノストラダムスの大予言」というものが何度目かのブームを見せていた。一九九九年に人類が終ってしまうのなら、その時自分は三十二歳。頑張っても仕方がないのかもしれないなどと、若くして厭世的な気分になったりもしていた。少し成長して
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