面接(6)/虹村 凌
 
感と不安を抱えた俺は、呆然としながら彼女の背中を見送っていた。彼女は瞬く間に、回遊魚達の群れの中に飲み込まれていった。見えなくなってからも暫らくの間、俺はその場に立ち尽くしていた。
 彼女がした事が衝撃だったのでは無い。かと言って動揺しなかった訳じゃない。ただ、動揺の原因は、彼女の行動じゃない。彼女が残した、違和感である。先ほど、俺の脳裏を過ぎった不安と言うのは、これだったのかも知れない。膨れ上がった違和感と不安は、俺の足運びを重たくした。体を引き摺るようにして別の路線の改札口に向かうと、俺は一本の太い柱にもたれかかり、一歩も動けなくなった。 違和感の原因はわかっている。しかし、それは彼女には言
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