面接(5)/虹村 凌
端から見たら、随分と間の抜けた画なんだろうな、と思う。この逆なら、今までに何度か見て来たけれど、今のこの状況、男が泣いていて女が慰めていると言うのは、俺は見た事が無い。何だかおかしくなってしまう。自嘲気味に、ふっと笑いが漏れた。
「やっと、笑いましたね」
彼女は、半分よりも小さくなったピースを携帯灰皿に入れると、缶珈琲をぐっと飲み干した。唇の端に、夜の所為で血にも見える、濃い茶色の液体が、うっすらと滴になって溜まっている。彼女は手の甲で、その赤茶色い滴を拭うと、ふぅ、と小さなため息をついた。
「もう、大丈夫です」
俺は缶珈琲を腫れた目蓋から話すと、プルトップを引いて、少しぬるくなった
[次のページ]
前 次 グループ"面接"
編 削 Point(1)