面接(6)/虹村 凌
 
、ちょいと辺りを見回した。同じ態度を取ろうが、ここら辺で職場の人間に見つかってしまっては、どうしようもない。今のところ見当たらないが、もしかしたら、もう既にどこかで見られていたかも知れない。俺は再び彼女の顔を覗き込んだ。
「…」
 彼女は俯いたまま、何も言わない。相変わらず、俺の右袖はつかまれたままだ。彼女の左手が、俺の右袖をぐっと力強く引いた。突然の事にバランスを崩し、俺は彼女の方に引き寄せられる。
 先ほどの予感は的中した。
「…それじゃ、また明日」
 彼女は左手を離すと、俺の脇を擦り抜けて改札口の向こう側へと、足早に消えて行った。
 予感が的中した喜びと同時に、膨大な量の違和感と
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