如雨露/木屋 亞万
命が終わりを迎えたら、雨を降らせましょうねと
彼女は園児の手を引きながら盛り土に
緑色した象の如雨露で水をかけてあげている
園児は鼻の頭を赤くして鼻をすすっている
園児には見えていた
住んでいる家が突如として瓦礫となり
壁がひび割れ、屋根が崩落し、隣家の車が黒い煙を上げている
町中が不完全なゴミの集まりのようになって、逃げ惑う声と足音
逃げられぬ身体と表面化した血液が瓦礫の山に埋もれて、呻いていても
助けて欲しい人間が多すぎて誰も助からない
その中でなお、銃をもった男たちが
助けて欲しい人間を殺すために走り回っている
あちこちで爆発が起きている、硝子が割れて、悲鳴が響い
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