鳥たちの雨/木屋 亞万
深い森の中に
最初の一滴が降り
雫は静かに瞬きをする
鳥の瞳になるのだ
枝葉を羽根に変えて
もぞもぞ動き始める
紅葉でもするように
深緑から脱色していく
すべての色は
深緑を母としている
すべての瞳は
雨粒の生き残りである
最初に地上に辿り着いた雫を
森は静かに保護していく
雨が降るたび一羽の鳥が生まれ
いつしか森の木の数を
上回るくらい鳥は生まれた
鳥から生まれる鳥も増え
雨粒を父とするものは
結果的に希少となった
いま雨粒が粉塵に汚れ
森の木々が根本から枯れるという
深刻な事態が起きている
雨粒と森がうまく結ばれず
鳥が生まれ落ちないのだ
私は鳥を守りたい
鳥たちの母なる森を
鳥たちの父なる雨を
私は守りたい
清純な最初のひと雫
透き通った瞳を
私は守りたい
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