雨の日の庭、傘から聞く風景/木屋 亞万
 
雨樋の裂け目から
私だけに降る雨がある
長方形の庭の隅
縁側から三歩進むと
雫の群れとの遊び場

傘に隠れてよく泣いた
いつも悲しいときは雨で
そのおかげで気が晴れた
傘を回して雫を飛ばす
じいちゃんは私の回る傘
微かに揺れる背中を
本を片手にずっと見ていた

スカイブルーの傘に
ばらばら雨が漏れてくる
そんじょそこらの道では
聞くことのない雨の滝
庭にはいくつも花が咲き
私はピラカンサを愛した
白い花が咲き赤く実るは
女の子の人生そのもの

雨はいつだって冷たく
空気より透明で優しい
涙の熱をそっと冷まして
赤くなった目の回り
鼻の頭に湿潤な
[次のページ]
   グループ"象徴は雨"
   Point(3)