190cm



 我等がアインシュタイン博士は言った

 本ばかり読んではいけない

 本ばかり読んでいる人間は、
 何一つ新しいアイデアを出せなかった

 知識は必要なときに図書館へ行けば
 幾らでも手に入るのだから・・・



 そう、僕らは本ばかり読み過ぎて 人の言葉を聞き過ぎた

 僕らはもう 自分の中の何が自身で体感し体得したもので

 何が他人が吐き出した記号の塊から捏造したものなのか見分けが付かない

 見分けが付かないことすら 気がつかない

 僕らは 自身で自身の世界を

 自身で分節し、選択し、評価し、記号化する行為を放棄した

 放棄することで 行為の決断から逃避し 決断の戸惑いを亡失した

 そしてその戸惑いの内にこそあったであろう

 世界の本質をも 放棄した


 僕らは知らぬ間に

 本来この宇宙で通用するはずも無い帰納と演繹を繰り返している

 今 世界それ自体その仕掛に何の疑問も感じないなら

 僕らは確かに 本を読みすぎ 話を聞きすぎた




 僕らは 一番初め 何が欲しくて この分厚い紙の束を開いたのか

 僕らは 一番初め 何を知りたくて 誰かの言葉に耳を貸したのか

 もしかしたら 世界の本質を求めたがゆえに

 僕らはそれを失ったのかもしれない


 ただ もうそれすら 僕らに思い出せはしない






自由詩Copyright 190cm 2006-12-22 11:40:34
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