190cm


 蛾は、何故あの月を目指さないか

 あの燦々と煌く夜空の星を愛でないか


 愚かか

 人の造った軽薄な灯にたかり

 一箇所に吹き溜まる


 昔、お前らはもっと美しかったのではないか

 決して辿り着けぬ永遠の夜空を羽ばたいた

 月に照らされるお前たち 幻想的だったろう

 
 お前らには夜空の星が地に落ちたようにでも見えるのか

 安っぽい蛍光灯の周りを彷徨って

 同じところをぐるぐる飛んで

 余りにも狭いその空を 仲間と群れる

 それ以上奥が無い事を知りつつ離れられない

 結局 いつの間にかみんなで地に落ちる


 嘘の空 嘘の夢

 同じところで堂々巡り

 押し合いへし合い叩き合い

 お手軽に見つけた灯の代償

 星を見失った蛾のさだめ

 手頃で身近な与えられた月明かり



 最近、お前ら、人間みたいだな



自由詩Copyright 190cm 2006-12-21 03:33:30
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