eclipse **
岡部淳太郎

いのちを
てのひらのように合わせる
欠けたまま
あることの
ひとつの償いであるかのように
頭上の硬い岩は
いつでも欠けたままで
(満ちることなど
たまにしかない)
私たちの不安定な歩行に
同調しているかのようだ
求めるべきものなど
ほんとうは何も
ないのかもしれないのだが
私たちは求める
欠けたまま
あることで
ひとつの欠片でしかないことを
知る
知ることで
つまずく
ひとつの石に
それもまたただの欠片でしかない
石につまずく
そのたびに
意味もなく
頭上を見上げる
ちぎれた雲を
ただの一部しか
見ることが出来ない空を
私たちは見上げる
(視界のすべてが空で埋めつくされる
ことなどありえない)
ただの布のきれはしを
見上げる
隣の者がほしい
切実に
私たちは石
大きな石から分かたれた
ただの欠片
欠けたまま
あることの
ひとつの安らぎ
いのちを
てのひらのように合わせる



(二〇〇六年十月)


自由詩 eclipse ** Copyright 岡部淳太郎 2006-12-10 16:00:54
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