靴ズレ
アキラ

赤いポストをめがけて行って、
ふと視線を右にそらすとあなたがいた。
二車線の道路をはさんで、
大きなガラスの向こう側。

視力は前より落っこちて、
お月さまはいくつも見えるのに、
何メートルも離れたあなたを、
わたしは見つけることができた。

変わっていなくて泣けてきた。
変わったことがわからない距離に泣けてきた。
いじらしいわたしに泣けてきた。

走って逃げた。
後ろを向いたあなたが、
振り向いて、わたしに気付かないように。
走って逃げた。
後ろを向いたあなたが、
振り向いて、わたしを見ても、
わたしだとわからないように。

走って逃げた。

慣れない靴が痛かった。


自由詩 靴ズレ Copyright アキラ 2006-12-05 13:15:26
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