大切な友との別れ。。。
Lily of the valley

今日、ボクは友達の墓参りに行った。
3年前の1月20日から、何度と無く足を運んできた。
しかし、今まで、ただの一度も、その墓の前で手を合わせたことは無かった。
手を合わせてしまえば、その子の死を、認めなければいけないような気がしていたからだったのだろう。
認めてしまえば、いつか、自分の心の中の記憶から、その子が居なくなってしまう。
そんな気がしていた。
友達は、3年前、2001年1月20日に、自らの命を絶った。
あれから3年。
毎月の月命日には、必ず墓参りに出掛けた。
学校がある日は、学校に行き、放課後に。
学校が休みの日は、朝から一日中。
家族の、誰もが知らないこの事実。
忘れようと思っても、忘れることさえできない、この現実。
その子が開設していたHPにも、未だに足を運んでいる。
もう、誰も来ることのないそのHPの掲示板に、ボクは書き込む。
その日の出来事、最近起きた事件、自分の今の心境などなど。。。
どうしても、過去の傷跡をぬぐうことは出来ない。
過去に固執していてはいけないと思いながらも、前に進むことが出来ない。
兵庫県に住んでいながら、長野の大学を受験したのも、その所為だった。
ここにいては、どうしても思い出してしまう。
中学の前を通っては、『こんなことしてたな』とか、『こんなことあったな』と。。。
今、高校生活は終わりを告げてしまったが、色んなことを考えていた。
あったはずの、その子の未来を。
中学3年の始めに、初めて出会ったその友達は、明るく、人懐っこい性格の持ち主のように思えた。
だけど、実際は、他人の気持ちに敏感で、自分の言いたいことを言い出せない、そんな子どもだった。
人付き合いが苦手で、どのグループに属することも出来ず、いつも独りぼっちだった。
その子とボクとの共通の友達のおかげで知り合うことが出来、すぐに仲良くなれた。
でも、ある時、その子は腕を傷だらけにして、学校に現れた。
一つ一つの傷自体は、そう深いものでもなかったし、たいしたことは無かったのだが、一度に、百近い傷を作っていた。
自分で傷付けているだろうことはすぐに分かった。
ボクも、同じことをしているから。。。
ある時、ふとしたことから、その子はボクの傷に触れた。
そして、『私の傷は浅くて多いけど、RedSkyの傷は、深くて少ないんだね。』と言った。
すごく愛しそうに、ボクの傷口を、一つ一つなぞっていた。
ボクは、その時の彼女の顔を忘れることは出来ないだろう。
12月になって、親の勧めで心療内科に通うことになったその子は、学校に顔を出さなくなった。
ボクらは、メールやHPの掲示板を使って話をしながら、たくさんのことを学んだ。
自分たちなりの、小さな夢のことも話し合った。
美術部だった彼女は、ボクら4人グループで、一つのアニメを造りたいと言った。
絵の得意な朝霧さん(仮名)が、原画を描き、彼女がセル画にし、ボクが脚本を書く。
声優を目指していた隼人(仮名)が、声優をする。
ただの子ども染みた夢だけど、4人のうちの1人でも欠けては出来ない、そんな夢だった。
そんな話をしてくれた、ほんの1ヶ月後、彼女は帰らぬ人となった。
2001年1月20日土曜日。
ボクらの通っていた中学校は、土曜日は1限しかなく、阪神大震災の記念行事として、避難訓練が行われた日だった。
火事を想定した避難訓練で、校庭に避難したときには、ちらほらと雪が舞っていた。
避難訓練が終了し、友達と連れ添って帰っているとき、彼女の話題が上った。
3学期になってから、まだ2回しか顔を出していなかった彼女のお見舞いに行こうかという話だった。
そんな話をしているとき、彼女は自宅の浴槽で、15年の生涯の幕を閉じていたのだ。
次の日の日曜日、朝霧さんと後輩の誕生日プレゼントを買いに、川西まで出掛けていた。
夕方の6時を回ったくらいだっただろうか、後輩にプレゼントを渡すため、彼女を呼び出そうと家に電話をかけ、その事実を知らされた。
ボクと朝霧さんは、急いで家に帰った。
家に帰ってすぐ、担任の先生がやってきた。
特に仲の良かった人たちの家を回っていると教えてくれたが、その時は、そんなことは耳に届かなかった。
ただただ信じれなくて、涙を流すしか出来なかった。
ついこの間まで隣で笑っていたのに、もうこれからはその笑顔も見れなくなる。
いきなり叩きつけられた現実に、どうすることも出来なかった。
受験を間近に控えていたにもかかわらず、何をする気にもなれず、学校にも、塾にも行かなかった。
行けば、まだどこかに彼女の面影を求めてしまうと分かっていたから。
12月。
模試を一緒に受けに行ったとき、帰りに昼ごはんを食べながら、話をした。
『2人が高校に受かったら、またこうやって遊びに来よう。』と。。。
そして、アクセサリー屋で、一組のピアスを買い、片方ずつ持つことにして別れた。
約束は、果たされることは無かったけど、ピアスだけは手元に残った。
3年間、それを見つめ続けて生きてきた。
今日、月命日でもないのに墓参りに来たわけは、自分がもうすぐ引っ越してしまうから。
彼女との思い出のあるここから離れると決めたその時から、ある決意をした。
それは、彼女と片方ずつ持っていたピアス。
それを、彼女と共にいさせてあげること。
片方は、彼女の遺骨と共にある。
そして、それと同時に、彼女に誓った。
今はまだ、辛い現実から逃げ出すことしか出来ないけど、いつか現実を受け止められるくらい強くなったら、またここに帰ってくると。
そう心の中で言いながら、ボクは彼女の墓前に手を合わせた。
ボクは、彼女とのしばしの別れを、神に誓った。。。


大切なものほど、なくしてしまった時の衝撃は大きいです。
ボクは、それを学びました。皆さんも、そんな経験はありませんか?


散文(批評随筆小説等) 大切な友との別れ。。。 Copyright Lily of the valley 2004-03-13 19:03:31
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