あかちゃんとわたし
佐々宝砂

あかちゃんとわたし
フライパンでやかれた
フライパンはすばらしくあつかった


ちっちゃいころおぼえたはなうた なんかどこかまちがってるかもだけど でも きもちよくはなうた唄いながら あたしはあんたにつかみかかる どしん とベッドの上で それから離れて シーツのうえにタオル敷きなさい ひざまづいて ねえ ねえ それからなにがほしいか言いなさい ほしいんでしょう ほーらはっきり言うの 言いなさいよ そう 針でしょ ほーら針よ だいじょうぶ 消毒してあるから 消毒薬もきちんと用意したから で 針でなにしてほしいの 言いなさい そうね そういい子ね 刺してやるよ でもあそこに刺すとすっごく血がでるんだよね ちゃんと拭くのよ いーい わたしがあんたの汚い血で汚れたら どうするの ほら ちゃんとやりなさいちゃんと ちゃんと舐めるの だめねえあんた

あかちゃんとわたし
フライパンでやかれた
フライパンはすばらしくあつかった


ああ このうた? 知らなかった? あんたの子よ あんたとあたしのあかちゃん 生まれてすぐあたしがフライパンで焼いちまったの ほら台所にいまも置いてあるフライパンでさ あかちゃんってさーちっちゃいんだよねものすごく あーんなフライパンで焼けちゃうんだもん なんかさ身体よりおっきいような声で泣いてすっごいやかましかったけど 五分もしないうちにだまっちゃったよ それでもまだ強火でどんどん焼いたの そしたらどんどん小さくなったの もちろん焦げ臭いから換気扇まわしてね あとで近所からばかに焦げ臭かったねって言われたけど 料理失敗したって言ってごまかせちゃった そんなもんよ あはははは ああ きもちいい あんたのあれはちっちゃくてだらしないけど あんたの舌はきもちいい

あかちゃんとわたし
フライパンでやかれた
フライパンはすばらしくあつかった


ねえ
あんたもあたしのあかちゃん
あんたもいつか焼いてあげる


自由詩 あかちゃんとわたし Copyright 佐々宝砂 2006-09-17 04:40:38
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