陽気なイカロス
佐々宝砂

ここまで来られるなら来てごらん
あはははは
お酒は要らないし麻薬だって必要ない
強烈な光線が肉体をつらぬく
飛翔 飛揚 昂揚 上昇
墜ちるまでは飛ぶだけさ

遠く眼下でオレンジ色の雲が
紺碧の海をふちどっている
近づいてくる白熱する円盤
なんてここは明るいのだろう
なんてここは熱いのだろう
彼方に小さな青い球体が見える

総てを溶かすエネルギーが
私のあらゆる開口部から入りこむ
私はこの明るさに耐えうる
私はこの熱に耐えうる
歓喜 光輝 目眩 痙攣
もう目なんか見えなくなっている

私は恍惚として崩れる
墜ちるよりは焼かれたい
太陽風に爛れた手足をそよがせ
灼熱のコロナを恋い慕い
嬉々として煉獄に飛びこむ
私は陽気なイカロス





自由詩 陽気なイカロス Copyright 佐々宝砂 2006-09-12 20:44:05
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