銘菓マトリョーシカ
たりぽん(大理 奔)

私をかたちつくる
わたしのかたち
私はわたしのなかにあって
手を持ち指を持ち唇を持って
君を抱きしめる

でも
私を入れたわたしを
あたしが包み隠して
誰かとの距離を調節もする

わたしはあたしから飛び出し
真実の私を伝えようとする
そしたら誰かが
あたいをかぶせたんだ

あたいは強くって泣かないし
人当たりもよくって明朗で快活だ
そんな装飾がたくさんついたあたいを
私もわたしもあたしも気に入ってる

でも
わたしが抱きしめたきみが
あたいを嫌いだって言うんだ
しょうがないから私は
あたいの上にわたくしをかぶせた

わたくしは礼儀正しいし
おしゃれで、キザで、静かにしゃべる
君は、変わったわね、といって
僕をわたくしにかぶせた

いつの間にか私は
明るい世界を知らなくなって
私をかたち作るものが
どれなのかわからなくなって
夜の果てから逃れようと
灼熱の石釜に飛び込んだ

こんがりときつね色に
僕をまとったわたくし型の
あたいとあたし味
の私が
そのおみやげなんだよ



題名だけのスレ5より



自由詩 銘菓マトリョーシカ Copyright たりぽん(大理 奔) 2006-02-12 23:16:10
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