ちいねえちゃんと羽
mina
毎朝一缶のお酒を買う
ちいねえちゃんのことを思いながら
それを飲む
僕は頭のなかにいる人達を整列させる
たいていは 小さな羽アリに変身していて
ほとんどぼやけて見ることができない
目が合うこともなく
眺めるだけ
ちいねえちゃんは いつまでも羽をもてずに
僕の目頭の近くに座り込んで
眠ったままだ
僕はなるたけ 色のついたものを見る
雪うさぎの瞳の南天だとか
雪うさぎの瞳になるピラカンサだとか
赤いものばっかりだ
ちいねえちゃんは小さなうさぎと赤色が好きだったから
それと
凍った蛇口の先にできたつらら とかも見る
ちいねえちゃんは
綺麗に光るものも好きだった
嬉しがって
ひょん、と滑りおちて睫毛をつたって出てきてはくれないかと
願いながら
霜の降りた畦道を歩く
初夢にちいねえちゃんが出てきたこと
おかあさんには内緒にしていた
薄化粧をした 最後の姿で
みんなが棺の蓋の釘を叩いた小石を 左手にもったまま
途方にくれていたからだ
そのままおかあさんのところへと行こうとしていたけど
とめておいた
羽アリが多くでた翌日は雨が降るという
ちいねえちゃんは
雨を降らすことも 飛び立つこともできずに
ずっと 眠り続けている
自由詩
ちいねえちゃんと羽
Copyright
mina
2006-01-08 20:54:20