なつのゆめ、だいて、はしって、○○○○○!
吉原 麻

髪なびく風通り抜けるTシャツの袖つまんだら恋走り出す

真っ白なシーツに夜を預けたら眩しい光に「おはようございます」

「おはよう」とまだ寝てる声で返事する眼をこする手すぐわたしに触れて

さて今日はどこに行こうと話す朝コーヒーの苦い香りに沈む

自転車で隣街まで出かけたら明るい緑の葉達賑わう

ベーグルを頬張りこぼす不器用な君の生き方重なりたくて

午後三時おやつにケーキつまむけど君は煙草と紅茶のトリコ

来た道を帰る寂しさ充実感もとあるところにもどる摂理は

梅雨明けたからからの空を睨みつけ洗濯物とりこむときほろり

夕立が来る前にビール買いに行こう車のキーを回す仕草で

カーラジオ口ずさむ曲は十年前ヒットした頃君とはいない

枝豆の塩加減なら君がして涙と汗でわからないから

食卓につくとき必ず眼鏡とる君の目の前わたしはいるのに

流し込むアルコールが落ちてゆくとき想いの何かも崩れ落ちてく

半ダースふたりであけたビールの缶潰す音だけ響く夏の夜

わかったと何度も頷く君はなぜその都度テレビのチャンネル変えるの

猫を抱くその優しさが羨ましいいっそ獣になってしまおう

首筋の虫刺されの痕掻きながら今日の暑さをくどく言う君

虫が鳴く雲動くもう夏が去るかすったままの熱さを置いて

一生涯一緒にいたいと思ったらそれから一年心に留める


短歌 なつのゆめ、だいて、はしって、○○○○○! Copyright 吉原 麻 2005-07-24 00:15:18
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