歌声の消えた海
あおば



袋小路共依存というタイトルで
なにか書けないかと思案していると
「歌声の消えた海」
という新作ドラマの
タイトルバックが写り込む
自転車で海へ行く主人公の
爽やかな笑顔が流れてゆく。

袋小路に追いつめられた
わたしの現在完了進行形には
歌声はおろか音符もない
手にしている
薄汚れた紙には
解読不良につき
廃棄
と記されていて
責任者の認め印が何カ所か押してある
これが夢ならばいいのにと思うのですが
夢ではなくて現実なのです。

歌声の聞こえる海は魅力的で
たとえ命を取られることになっても
構わない。

そうなのです
海には歌声
ほたるには川のせせらぎ
褐色の無人の荒野のような歌のない海には
風も吹かないで欲しいと切に願う。




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初出 「poenique」の「即興ゴルコンダ」


自由詩  歌声の消えた海 Copyright あおば 2005-06-08 01:00:59
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