海の向こうで
藤原絵理子

橋は爆破された
ただの子競り合いだと
ささいなことだと言う
生まれてきて生きて
そして死ぬ
やせ細るまで続くはずの
一本の糸が
ふいに断ち切られる
何本もの糸が
小競り合いのために断ち切られる

電網を伝って流されてくる映像でそれを知る
昨日硫黄島で死んだはずの男が
今日はラーメンのコマーシャルをしている
3回死んだらゲームオーバー
百円玉でまた生き返る
なにか勘違いしていないか
糸はひとりに一本しかないのに
何度でも結びなおして繋げると思っている
血を流して路上に倒れている死体
映画のセットのようにしか見えなくなってしまった

昨日孫の頭を撫でていた手で
老人は火炎瓶を作る


自由詩 海の向こうで Copyright 藤原絵理子 2024-02-20 21:17:16
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