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あなたの手の内で
息を引き取ろうとしている
翼の生えた人を
夜通し寝ることもできずに
かわいそうだと抱き締める
あなたがどんなに美しくても

用途以上のものにはならなかった
伏せた睫毛をはためかせて
けらけら笑う奇妙な鳥は
この世の人の名を捨て
運命も金も清い心も体も何も
とっくに持ち合わせない

だから飛べる
きっと忘れられない
偽りのような軽さで
これが死の重みだと
この世にはないものを
縛り付けられて初めて生きる
傷付いた喉で
籠の鳥の嘘など
もう啼けやしない

あなたに
そう言い続けて
兄は死んだ


自由詩Copyright 303.com 2024-01-21 00:03:43
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