願いごと
由比良 倖


不思議な、影の力が湧いてきて
死ももう遠くなくて、僕は空っぽになる
死ぬほど身軽になって、半分天国で生きてるみたいに

全ては思い出に変わる
死んだら思い出は何に変わるだろう?

籠の中に入れられた滑らかな鳥
そのガラスの目玉のように
浅い緑色に、僕は生きていきたい

片付ける、
宇宙の思い出の数々を、
両親に買って貰った思い出と記憶を、
夢の中で出会ったモノクロの人々を。
どこから、
どこから僕の言葉は出てくるのだろう?

片付けていく。
理性を、生きる意味を、有名になりたいという熱量を。
感情に従順に生きていく。
美しく目映い天気。

この空は僕のもの。
虹のおかげで生きているようなもの、
虹は全ての世界にかかっている。



ユーカリの葉っぱみたい、奇麗だね
と昨日言ったけれど
ユーカリの葉っぱなんて本当は見たこと無いんだ
でも、嘘を吐いた訳じゃ無くて

終わりを感じる
終わりは全ての始まりだ
僕はここには生きていなくて
父も母も死んだように思えて
それが喜ばしく思えるくらい
僕は太古に生きている
けれど半分は生活していて
両親の不仲なことでさえ
半分はどうだっていいんだ

ユーカリの葉っぱのように、この世は奇跡だ

奇跡でどうにかなりそう
父と母は空を見上げていて
僕はコンクリートの壁を見詰めている



この世の無価値を信じていて
言葉の故郷はこの世界には無くて
世界の外にも世界があって
その世界は、
言葉にも、音楽にも
属していない
でも
ほんの少し、触れられる
きっと
そう信じてる

どこまでも、どこまでも、どこまでも
続いていく、この場所と、この瞬間

そして僕の永遠の内面

原子爆弾も、ヒトラーも
その内懐かしくなる
でも世界には倫理があって
倫理とは人工的なものであって
僕は人工的なものが好きだ
好きでなければ
生きていない

幸せなんて求めていない
僕は答えを知りたい
僕は殻を持って産まれなかった
だから自分を焼いた

何もかもが虹になりますよう
そしてこの秋の虫たちの声の中で
今この僕が、今この僕であれますよう


自由詩 願いごと Copyright 由比良 倖 2023-10-17 20:29:23
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