退路の夢
由比良 倖

全て、去っていった。
僕だけの夢を抱えて、僕もまた去っていくのか。
ともかく僕には友達がいた。
いたはずなんだ。
夢見るのをやめるには、僕はまだ早すぎるのか?

ここは寒い。天国のようだ。
恋も、恋慕も、感情も、すべて、
このまま、消えるのでしょうか?
僕はうまく歌えないし、
もう髪が真っ白になりそうだ。

僕は、全ての人が、色と音、虹を浴びることのできる部屋を持っていればいいと思う、
自分の心の声と、……
屋根や看板や夕暮れなどは、粉っぽい太陽に乾いていく。
みんなくしゃくしゃにして、切り売りすればいい。
何もかもが消えた跡には、数を充ててればいい。


薬を飲んで、僕は僕になる。
ゆっくり生きて行ける、かもしれない。
夢は消えない?

僕は椅子に乗って、蹲って、キーボードを叩いている。
白い音楽、に次ぐ音楽。
世界を罪深く感じるような。
金色のウォークマンから、麻薬のデジタル信号を吸収してる。

ピックをゆっくり削り減らして、プラスチックを愛して。
効くのか分からない薬を飲んで。
プラスチックの肌触りが好き。今はそれだけでいい。

最近…僕は涙腺が弱って、一日に一回は涙を流している。
虹を浴びる部屋、ヘッドホン、空調が効いていて、
ゲーム機と、音源と、インターフェイスと、
ギターと、ピアノベースがあって、ディスプレイがあって、
僕は虹色や、モノクロの言葉を作成している、あるいは光の音楽、
赤い鼓動の部屋にいて、
世界中の夢を一身に浴びている、いつしか僕は笑っていて、
声を、緑のマイクで、加工して……透明に、透明に、透明に、


僕の唇は銀色に、冷たく濡れている。
痙攣と目眩と憂鬱と、夢見心地のまま、
怯えの中で、ただ泣いているだけ、なのだけど。
無意味な未来には、いつでも、少しだけ笑っていられる。
……


自由詩 退路の夢 Copyright 由比良 倖 2023-10-15 10:01:04
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