怪異のはだえ
ただのみきや

ふたり分の沈黙を乗せて
笹舟は遠ざかる
意識を過去へ葬るための
ひとつの光の繭となって

むかし使っていた腕時計が
どこかで針を揺らしている
重ねた手が夜の魚のよう
夏の体温に静かに跳ねて

ひとつの積乱雲がわたしを見つけた
最初から打ち負かされている
屈することのないまま

文脈を美しく改ざんするために
なにを祀り なにをなだめ
舞うものらよ背も足音もなく


                 (2023年7月30日)








自由詩 怪異のはだえ Copyright ただのみきや 2023-07-30 13:06:54
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