それもまたひとつの装置
ただのみきや

人々の怒りが寄せ集まって流れをつくり
そんな流れがより合さってひとつの川となる
すぐにも氾濫しそうなすべてを押し流す勢い
なにもかも飲み込んで
旧態依然とした世の中を変えてしまうのか
だがやがて河口に至り 海へと流れ出して
ウソのように感情の圧力は低下する
揺蕩う時間と情報の波でくりかえし削り磨かれて
だんだんと鋭利さを失くしてゆく
やがては地理的歴史的に相対化され
数多ある砂粒のひとつと化してゆく
ある程度吐き出すことができた感情は 
日常という揺り籠であやされながら
無意識にそのしこりを弄っている
幼子のマスタベーションのように
集合意識の満員電車ですし詰めになったまま
次の駅 次のはけ口 次のカーニバルを待っている

政治で変わるのは線引きや立て看板うす皮一枚
クーデターも同じだが皮膚下の出血を長く患う
信条など壁紙 デモはたんなる祭りにすぎない
なんと幸いなことだろう
一線のギリギリ手前まで行って興奮して
どんな悪口もバカ騒ぎもゆるされている 昔から
カーニバルの日の道化に率いられた群衆には

 
                 《2022年9月24日》






               


自由詩 それもまたひとつの装置 Copyright ただのみきや 2022-09-24 15:58:08
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