足りないんだ、終われないんだ
ひだかたけし

手を握って
抱きしめて
温めて、温めて

でも、
それだけじゃ足りないんだ

  *

岩肌が凍り付いて銀に光輝く
あの雪峰の頂を目指そうよ
うねる青い海原に
我を忘れてジャンプしよう

そこは内も外もないところ
そこは上下左右もないところ
僕らが属するあまねき故郷

意識の壁を超え澄みわたる
透明な雨音の連弾
僕の身体は冷えきって

血縁を突き抜ける
群れる排他的集団を逸脱し
依存し合う関係を壊し
ひとりぼっちも踏み越え
内なる深い泉に意志し飛び込む

沈んで沈んで、底に達し底を抜け

其処で
僕ら、新たに繋がり響き合う
其処で
僕ら、新たに熱狂する

  *

手を握って
抱きしめて
温めて、温めて

でも、それだけじゃ足りないんだ
でも、それだけじゃ終われないんだ


自由詩 足りないんだ、終われないんだ Copyright ひだかたけし 2022-09-15 18:45:16
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