音にならない振動
竜門勇気


馬鹿な真似はやめよう
きみの真似してのびてよう
いつ見ても酔ってる
どこで見ても酒飲んでる

あんな酒のんで
あんた長生きしねーよ
ニヤニヤ笑いながら聞いてる
喉の奥で凍りついていく言葉が
なんだかいいもんのような
そんな気がするけど
俺も酔っ払ってっからわかんねー

乾いた花瓶の置かれた窓辺に
しわくちゃのシャツがあって
一日が切り刻まれた映画のフィルムを
いくつか並べた

誰とも約束してないとこで
誰か待ってるふりをする
ぶっ壊れる前のキカイみたい
怖いくらいまともな顔をしてるよ
中身はなんの意味もない泥になってるのに

あんな酒の飲み方しても
なんだかんだ40歳までは生きれるんすね
言葉ではもうやってられない
誰かなんか言ってる
夢みたいな朝
墓みたいな朝

もうすこしで誰もいなくなる部屋で
声色を変えてしゃべる
もうやめろよ
どうせもう終わりだぜ

るせー亡霊
自分の亡骸はおしゃべりっぽい
僕はあんたの真似してるんだ
あんたの生き方を真似して
次の亡霊になる

もうすこしで誰もいなくなる部屋だから
声色を変えてしゃべってる
もうやめようぜ
どうせどうしようもないさ
思い出したように叫ぶ
はらへった!、とか
さみしい!とか

のびたきみを見てる
おれもあんたみてーになるよ
もうだれもなんにも言わねー
おわりだぜ、これで
もうすこしで誰もかれもなくなる
へんな酒を飲んでる
気持ちよく酔っ払ってる



自由詩 音にならない振動 Copyright 竜門勇気 2022-09-15 13:21:16
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