ヨランの挑戦(九)
おぼろん

「どうやら、本当にお前に任せるしかないようだな、ヨラン。
 見ろ、あの雲を。あそこからは、何らかの建物が突き出している。
 このような世界、わたしは初めて目にしたぞ!」
感嘆の思いを隠せないといった調子で、アイソニアの騎士がヨランに言う。

「まずは歩きましょう。アイソニアの騎士様。そして、エイミノア様。
 わたしたちの一挙手一投足が、この世界に影響を与えるのです。
 答えは自ずと見えて来ましょう。わたしたちが求める、虹の魔法石も」
そう言って、盗賊ヨランは二人に先立って歩き始めた。

周囲には、異様な光景が広がっていた。石造りのようでもあるが、実際にはそうではない建物。
それは家とも見え、砦とも見えた。そこには透明な壁もあった。
中が透けて見えるのである。しかし、そこには人一人いないようであった。

やがて、三人はある集落へと辿り着く。それが集落であると思えたのは、
そこにいくつもの建物が立ち並んでいたからである。ヨランも押し黙る。
だが、そこに声をかけて来た者があった。ハーレスケイドに来て、初めての住人である。


自由詩 ヨランの挑戦(九) Copyright おぼろん 2022-08-26 01:03:57
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