ハルシオン
雨の音

誰にも会いたくなくて
お花の名前の薬を飲みました
溶けて行くのは意識なのか
それとも大嫌いな世界なのか
どちらにせよ、錯覚なんでしょう
本当のわたしはどうしようもないほど
着古した寝巻きを纏って布団に挟まっているのを知っていて
それすらも辛くて目を閉じているの

明日来る人は
どうやら新しいわたしをくれるらしい
明日来る人は
どうやら新しいわたしをくれるらしい

今の古いわたしですらわからないのに
新しいわたしをくれたって
もっと分からなくなってしまって
もっと濁って憂鬱になってしまう

明日来る人を殺してしまわなきゃ
わたしは一人で朝寝をしたい
明日来る人は誰なのだろう
わたしを犯しに来る人は

お花の薬をたくさん飲んで
明日すら溶かしてしまえるなら
もしかしたら知らないうちに
新しいわたしになっているのだろうか

そうすればこんな気持ちですら分からなくなれるのかな
肌を這う虫のような不安を払ってしまえるのかな

それはわたしなのかな
それはわたしなのかな

こわい
今の古いわたしは
ゴミ箱で甘酸っぱい匂いをたくさん吐いて
生きるわたしを妬むんだ




自由詩 ハルシオン Copyright 雨の音 2022-06-18 01:15:54
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