秋風に吹かれて
番田 

最近というよりも今日はとても寒かった。風に吹かれていると、忘れていくことは危険なことだと、いつの間にか思っていたりする。でも、人は友人も、家族のことも、読んだ本のことも忘れていくのはなぜだろう。そうであることを、そして思うのはなぜだろう。どんな喜びも悲しみも、見果てぬ彼方にあったはずの希望も、人は歳を取れば忘れていくのだ。抱き合ったことのある相手も、喧嘩をしたことのある相手も、追いかけていた夢も、そこに存在しなかったかのようにして、忘れていく。あたかも忘れていたことのようにして、覚えていることを、遠い景色として眺めてみても、そのことにすら、意味は、でも、無いのだが。


散文(批評随筆小説等) 秋風に吹かれて Copyright 番田  2021-09-02 01:22:49
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