メルヒェン
道草次郎

森がありました。
そこでは陽もたいそう愉快そうでした。

何処からか陽気な小人が三人やって来て、素敵な小屋を建てました。そこで三人一緒に暮らし始めたのです。

ある嵐の日のことです。森に雷が落ちました。小屋にいた小人は三人ともショックで死んでしまいました。死んだ三人の小人の亡骸は、ずっとそのまま小屋にありました。

とてもながい時が経ちました。
ひとりの少女が森を歩いていました。少女には秘密がありました。少女はその秘密を埋める場所を探していたのです。

少女は小屋を見つけて中に入りました。三人の小人は少女を歓迎しました。少女も喜びました。暖炉のそばで少女は尋ねました。
「ねえ、三人の小人さん、あたし秘密を埋めたいの。何処かいい所を教えてくれない?」
三人の小人はニッコリ微笑むと、暖炉の方を指さしました。

少女は礼を言い、その小柄な体を暖炉の中へ押し込みました。
「ここね、ここがいいのね?」
少女は小人にむかって言いました。しかしその時には、すでに、小人たちの姿は何処にもありませんでした。少女は驚きました。

ですが、暖炉の灰の中から突き出ている三つの白いものに目がいくと、あっと息を飲みました。なんとそれは三つの小さな髑髏されこうべだったのです。

少女は少しして落ち着きを取り戻しました。髑髏されこうべを手に取ると、額の部分に口付けをしました。そして、つごう六つある耳の窪みに一文字ずつ言葉を吹き込みました。

「こ」「ろ」「し」「て」「や」「る」

森がありました。
今日も、小鳥たちは楽しそうに鳴き、そよ風は林を軽やかにわたってゆきます。陽もキラキラと煌めいて愉快そのものと見えます。



散文(批評随筆小説等) メルヒェン Copyright 道草次郎 2021-04-15 21:13:33
notebook Home 戻る  過去 未来