料理で俳句⑨きのこ飯
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本日のお品書き~きのこ飯~


 一膳に一山香る茸飯


 松茸飯を最後に食べたのはいつのことだったのだろうか。まったく思いだせない。鰻重を最後に食べたのはいつのことだったのだろうか。これも急速に記憶の圏内を遠ざかりつつある。

 これだけバイオ技術が進んでいるのに、なぜ松茸と鰻だけは例外なのだろう。不思議な食べ物だ。

 仕方ないから舞茸、シメジ、エリンギをたっぷり使い干しシイタケの出し汁とみりん・醤油で茸飯。「匂い松茸、味シメジ」などというが、ありゃ嘘だね。天狗が舞うほどうまいから舞茸。これも嘘。

 今から二十年ほど前、北朝鮮から帰ってきた小泉首相の政府専用機にはお土産の松茸が二百キロほど積まれていたそうだ。当時の外交規約で、外国政府からの贈り物は二万円以内と制限されていたから、さあ、大問題。国会でネチネチと追及された。
 野党議員「松茸、もらったんでしょ?」
 福田官房「むにゃむにゃむにゃ」
 野党議員「食べたんでしょ!?」
 福田官房「むにゃむにゃむにゃ」
 (この間三日)
 野党議員「返したんですか?」
 福田官房「それは、まあ…、生ものですからねぇ…」
結局、食っちゃったわけだ。松茸飯にして。

 できた茸飯を飯椀に山盛りにして、目を閉じる。色あざやかな錦秋の山々を想像する。そこに必死で松茸のゆたかな香りをかごうとするが、すでに香りの記憶をなくしている。






俳句 料理で俳句⑨きのこ飯 Copyright SDGs 2021-02-21 08:49:48
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