料理で俳句⑧鮎
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本日のお品書き~鮎~


よく見れば鮎のつくづく京唄子


 最近スーパーなんぞで求める鮎はどれもこれも太りすぎで、脂もいやらしく、焼いていると炎とともに油煙のような煙があがり「お前はサンマか!?」と毒づきたくなりますな。あ~やだやだ。そこへ行くと京都は花背の「美山荘」の鮎はよかつた。

 祇園でタクシーを拾う。
「美山荘まで」
「花背…!?」
運転手は笑顔を浮かべた。
「おかげさんで、今日はこれで上がりにさせてもらえますわ」
車は東山通りを北上する。北白川あたりを通過するとき、運転手から声がかかった。
「ちょっとガスを充填したいんですが」
「?」
「いえ、帰りにガス欠を起こしそうで」。
車はタクシー専用のLPガススタンドにステアリングを切った。

 京都市内からタクシーで一時間はかかる花背は、京都というより福井のほうが近いのではないかと思わせるロケーションで、実際、川の流れも若狭湾のほうへ流れておつたような。

 母屋(食堂)と離れで構成されたこの宿は、食事棟と宿泊棟が分かれており、離れの宿泊棟には三部屋しかない。テレビもラジオもない。朝夕の食事は母屋で摂る。食卓はなく食べ物は、すべて畳の上に置かれる。女将が厨房から一品づつ料理をもって現れ、料理の説明をし、一礼をして下がる。胡坐をかいた目線の先は、山菜と鮎づくしの料理が広がる。

 鮎は若鮎。十センチ内外。焼かれた鮎が青々とした笹の葉の入った籠に十数匹。そして鮎の脊ごし。どちらもあっさりとしながらもコクがあり、鮎のいる川は西瓜の爽やかな青いにおいがするが、その川ごといただくような清涼感があつた。これが鮎でんがな。are you know?

 ビールで舌を湿らし、日本酒で鮎を堪能し、ウイスキーで余韻を楽しんでいるうちに、三時間はあっという間に経った。ふらつく足で宿泊棟に向かう。離れまでの暗い砂利を踏む。都会の明るさに慣らされた目には、足元が心もとない。歩みを止めて、ふと見上げれば満点の星。その中を天の川が大きく流れていた。





俳句 料理で俳句⑧鮎 Copyright SDGs 2021-02-19 11:52:40
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