転勤族のふるさと自慢6
Dr.Jaco

さて春である。年度末の多忙さからも解放され、自宅の周囲の雪もようやく汚く小さ
い固まりを残すのみとなった。いよいよ青森に春が来る。恐らく3年周期の転勤族に
は最後の青森の春、そして夏だ。
この駄文で何度もしつこく言ってきたが、青森と言えばねぶた、ではない。春である。
冬から春のダイナミックな変化がこの地に住む人々を勇気づけている。実際みんなホ
ッとしている。私と妻もホッとしている。
話題と言えば、トレッキングだ。車ばかり乗って歩かない青森の人々よ、歩け歩け。

青森市内に冬、どうしようもなく雪を降らせる八甲田山、そこが私らの主たるトレッ
キング場所である。初心者だから、そんな大したコースではないが、お勧めコースを
2つ。

酸ケ湯から毛無岱(けなしたい)
温泉ファン垂涎の酸ケ湯温泉旅館裏手から登る。クマザサだらけのブッシュをしばら
く歩くと突然視界が開ける。そこが下毛無(しもけなし)である。湿地帯の草原に木
々が点在する。チングルマ・キンコウカなどの高山植物が咲くのは5月以降か。殆ど
人に会わない。(新幹線が開通するまでに来た方がよい)
フサフサの草原なのに毛無とはこれいかに、とか思って歩くと、丸太でできた階段が
ある。ここを登ると上毛無(かみけなし)なのだが、そこで是非振り返って欲しい。
下毛無が一望される。上から眺める景色に包まれていくような、視界の転倒を感じる。
(本当に転げると大怪我する) 紅葉の時期はこれまた人も少なく、こんなんが天国
やったら行ってもええなぁ、と思ってしまう。錦、ってこんなん?と思ってしまう。
凡庸ではあるが、やっぱり自分の駄文は自然に勝てないって思う。きちんと敗北する
ことをお求めの詩人にはお勧めしたい風景である。簡単に負けて、明日に向かうこと
ができるかも・・・。

田茂萢(たもやち)岳から大岳
ロープーウェーで登った所から大岳へ歩く。大岳山上からは岩木山・むつ湾・下北半
島・津軽半島・鳥海山・北海道がいっしょくたのごっちゃに360°転回。山頂の風
に吹き飛ばされるのはやはり自分の持っていた凡庸な詩のイメージとやらである。
あ〜あ。
山頂に立つリアルさが全てを奪うから、登山家は山に登るのだろうか。
大岳から降りて毛無を経て酸ケ湯に降りるコースもある。

他にも蔦温泉付近のブナ林コース、白神山地のトレッキング等がある。とにかく人が
少ない。黒部渓谷とか、栗駒山とか、尾瀬とか、猫も杓子も行くところより、青森へ
いらっしゃい。特に独りでゆっくり考えたい詩人さんいらっしゃい。
国道に居並ぶ消費者金融の店とパチンコ店を見た後、八甲田に登り、リンゴを齧って
温泉につかれば、田舎の陰と陽が見えてきますよ。思わず愛してしまいたくなる・・・

ではまた。


散文(批評随筆小説等) 転勤族のふるさと自慢6 Copyright Dr.Jaco 2005-04-19 00:29:12
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